自己破産と偏頗行為
Q 偏頗行為とは、どのようなものですか。
A 偏頗行為とは「既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関
する行為」とされています(破産法第162条1項)。
代表的な行為としては、特定債務者に対する弁済や既存債務に対する新た
な抵当権の設定があります。
「既存の債務」というのは、現に存在している債務のことであり、支払い
停止の段階で残っている借金と考えてもよいでしょう。
支払い不能状態や破産手続きを開始したにも関わらず、「既存の債務」に
対して弁済や担保の提供をすると、偏頗行為として否認権の対象となりま
す。
破産手続きでは債権者が平等に扱われることが要請されます。
債務者の持っている財産は、債権額に応じて各債権者分配されるのが原則
であり、特定の債権者だけが債権の満足を受けると不公平となります。
偏頗行為は一部の債権者のみに利益を与える行為となりますから、債権者
の平等を害する行為として否認権の対象となってしまうのです。
偏頗行為の中でも、特定に債権者のみに対して弁済をする行為がなされる
ケースが良くあり、これを「偏頗弁済」と呼びます。
例えば、すでに支払い不能状態にも関わらず、知人からした借金だけはこ
っそり返してしまったり、親族には迷惑を掛けれないとして親族が連帯保
証人になっている債務だけ返済してしまうような事例があります。
人情としては分からなくもありませんが、このような行為は偏頗行為とし
て否認権を行使され、結局は破産手続きを長引かせるだけの結果に終わっ
てしまうのです。