自己破産と一部の債権者への返済
Q 自己破産手続きを考えています。ただ、世話になった知人からの借金につ
いてだけ、返済したいと思っています。問題はありませんか。
A 自己破産の手続きを考えているのであれば、すでに支払い不能の状態にな
っているのではないかと思います。
その状態で一部の債権者のみ優遇して返済を行うことは問題です。
破産の手続きにおいては、すべての債権者はその債権額に応じて平等に
取り扱われるという原則 があります。
「○○さんには世話になったから……。」「××さんにだけは迷惑をかけ
られない。」などの理由で、一部の債権者に対してのみ優先的に返済して
しまうと、返済を受けられなかった他の債権者との関係では不公平な結果
となってしまいます。債権全体を見たときには支払い不能の状態になって
いるにも関わらず、一部の債権者のみ優遇して返済を行うことは問題とな
ってしまうのです。このような弁済を「偏頗弁済」などと呼ぶことがあり
ます。
偏頗弁済は一定の要件のもとで、免責不許可事由に該当します。一部の債
権者にだけ利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、いまだ弁済期
の到来していないものなど返済の義務が発生していない借金について、担保
を提供したり、返済をしてしまうと、免責が受けられないこともあります。
また、支払い不能後の偏頗弁済は、否認権といって取り消しの対象になるこ
ともあります。
苦しいときにお金を貸してくれた知人に迷惑をかけたくないといったお気持
ちは分かりますが、偏頗弁済は破産手続きを行うにあたって非常に不利とな
りますので、注意しましょう。